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「肉食獣は獲物の内臓から食べる」は本当か?

02 16, 2011 | Articles

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きっかけはTwitterでのこのやりとり.

セレーションと肉食動物の食性

恐竜やサメなどにみられるセレーション(歯の縁についた細かなギザギザ)と食性の関連から,セレーションのあった絶滅したネコ科動物,そして現代の肉食獣の捕食行動,と話題が広がるなかで,こんな話題が出てきました.

「肉食動物って草食動物のハラワタを最初に食うと昔聞いた覚えが.肉には少ないビタミンの補給目的とか.」

確かによく聞く話.でも,これって本当なんでしょうか?
やりとりの中にもあるように,チーターは内臓を避けると読んだことがありました.
また,ハイエナやリカオンのように,獲物の腹を生きたまま引き裂くタイプの狩りをする動物の場合,倒したあと内臓から食べ始めるのが栄養があるからなのか,食べやすく露出しているからなのかを区別することは困難です.

(内臓を最初に食べるために腹を裂いて殺す,という考えはちょっとなさそう.ネコ科動物は自分より背の高い獲物の首に犬歯を突き立てることができますが,これは収納可能な長く鋭い爪あってのもの.長距離走行に適した爪をもつイヌ科やハイエナにはこの戦法は向かず,代わりに口が届く範囲でもっとも脆弱な部分を狙って攻撃していると考えるのが自然でしょう)


そもそも内臓といってもたくさんあるわけで,どれを最初に食べるというのでしょうか?そして,それによって補われる栄養素はいったい何なのでしょうか?

「肉食獣 内臓」で検索してみると,どうも広く信じられている説はもう少し限定されているようです.

肉食獣についてーYahoo!知恵袋

そう,消化管の内容物が重要とされているんです.
でもこれ,ちょっと考えてもおかしくないですか?

肉は消化しやすいので,肉食獣の消化管は短くて単純な構造でも平気.一方植物は消化しづらいため,草食獣には反芻したり胃に共生細菌を住まわせたり長い腸が必要,というのはご承知の通り.
だったら胃の内容物を食べても,細菌の助けを借りられない肉食獣の貧弱な消化管から吸収できる栄養素なんてほとんどないのでは?肉食傾向が強い種は臼歯が発達していないので,物理的な分解だけは助けになるかもしれませんが.
だいたい胃の内容物って金曜夜の駅前によくあるアレですよ?まあ,嗅覚の発達していないカラスはよく食べてますけど...

というわけでちょっと手持ちの文献をあたってみました. セレンゲティライオン (上) (下) によると,

小型の被食者を食べる場合,ライオンは普通,まず体の後半分を食べ,次いで前半身,そして最後に頭を食べる.(中略)第一胃の内容物,角,歯そして二,三の骨の破片や小片を除いて,体のすべての部分が食べられる.(P.476)


内臓のうち,消化管の内容物および時として肺のみ捨てられる.(P. 481)


やっぱり内容物は避けられています.この避けっぷりはかなり徹底していて,

時々,ライオンは腸を食べる前にその中から植物性の内容物を取り除く(中略)腸の片方の端をざらざらの舌の上に乗せ,ゆっくりと巻き込むように引っぱり,門歯を通過させるときに,内容物を末端に絞り出す(P.477)


この器用さはネコらしさを感じますね.イエネコやヒョウにも同じ行動がみられると,ネコの行動学にもあります.
一方,他の内臓はというと,

しばしば,ライオンは内臓のみを貪り食べる.これは,腸が低カロリー価であることを考えると,興味深い選択である.(中略)内臓の周りの腸間膜には脂肪の塊がある.おそらくライオンは,脂肪や,ビタミンなどの栄養上の必要性を満たすために内臓を食べるのであろう.(P.477)


栄養豊富というのは本当かもしれません.あまり一般には言われないと思いますが,脂肪があげられているのにも注目したいところ.他の種との比較もこの本で少し述べられています.

ヒョウもまた,しばしば内臓を食べるが,チーターは内臓を避け,トラは腸を食べる前に臀部や大腿部の肉を食べる傾向がある.(P.477)


チーターに関しては,Cheetahs of the Serengeti Plainsに記述があったように思ったのですが,該当部分が見つからず.上の本との記憶違いだったのかもしれません.ただし,

(At 3 months) cubs nibbled at stomach contents but clearly found them distasteful; in contrast, older cubs passed over them (P. 127)
(3ヶ月の仔は胃の内容物を口にしたが明らかにまずいと感じたようだった.もっと成長した仔は内容物を無視した)


とあるので,少なくともチーターも胃の内容物は避けるようです.

ピューマについてはCougar: Ecology and Conservationにもう少し好みが詳しく書かれていて,

Cougars typically select the nutritious thoracic organs, diaphragm, and liver for consumption first, followed by other abdominal organs, fats, the rib cage, and muscle tissues. Gastrointestinal tracts may be disconnected from the carcass and not consumed. (P. 124)
(ピューマはたいてい栄養豊富な胸郭器官,横隔膜,肝臓を最初に食べ,続いて他の内臓,肋骨,筋組織を食べる.消化管は切り離され食べられない)


とあり,最初に食べる臓器は心臓,肺,肝臓などで,消化管は好まないようです.

ではイヌ科のオオカミではどうでしょうか?Wolves: Behavior, Ecology, And Conservationを開いてみると,

The vegetation in the intestinal tract is of no interest to wolves, but the stomach lining and intestinal walls are consumed (P. 123)
(オオカミは腸の内容物には無関心だが,胃や腸の内壁は食べる)


The liver of prey may be the most important organs for wolves to eat, based on the variety of vitamins and minerals (中略)Like the nearby liver, the lungs and the heart are quickly consumed by wolves. (P. 124)
(肝臓は種々のビタミンやミネラルを含み,オオカミにとって獲物の中でもっとも重要な部分だ.肝臓と同様,肺と心臓もすぐに食べられる)


とあり,傾向は同じ.胃や腸の内壁には筋肉よりはるかに多い割合で必須脂肪酸が含まれる,という記述もありました.

ここにあげられた肉食獣はごくわずかですし,肝臓,心臓,中身以外の消化管を積極的に食べるのが,食べやすいからなのか,栄養価が高いからなのかは判断しようがないので,検証としては半端になってしまいました.しかし,やはり胃の内容物については栄養補給するどころか,できるだけ避けているというのが事実のようです.思うにこれは,「肉食獣も草を食べないといけないはず!」という,雑食の人間を基準にした思い込みから生まれた俗説なんでしょうね.
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