プロフィール

Author:tama_lion
FC2ブログへようこそ!

最新記事
Tags
Twitter
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
Recommended

Whale Fall: クジラの死後の物語

05 05, 2012 | Videos

0 Comments
50年以上にわたる生涯を閉じた1頭のクジラ.
その骸はこれから,生きた年月をも凌ぐ長きにわたり,特異な生態系の礎となり続ける―――

クジラの死骸がさまざまな生物に分解されてゆくさまを描いたペーパークラフト風のアニメ作品がとても素晴らしい出来なので紹介します.



タイトルのWhale Fallは単にクジラの死という意味ではなく,深海でクジラの死骸を中心に形成される生物群集をさす生物学用語でもあります.このような生物群集が発見されたのはほんの20年ほど前であり,極限環境として有名な熱水噴出孔周辺の生物とも共通性があるということで注目を浴びているようです.動画と併せて下記もぜひ.というかこの動画をWikipediaに貼付けたいくらい素晴らしい.

鯨骨生物群集 - Wikipedia

輝け!キンモグラ

02 05, 2012 | Articles

0 Comments
モルフォ蝶,タマムシ,カワセミなど,メタリックで変幻自在の輝きをもつ生物は枚挙にいとまがありません.
かれらの輝きは特殊な色素ではなく,表面のナノレベルの微細な構造によって引き起こされるもので,構造色と呼ばれます.
今回紹介する研究で,昆虫や鳥や爬虫類に比べると地味ぃなものが多い哺乳類の世界にも,この構造色の輝きをもっている動物がいることがわかりました.
その名はキンモグラ.
地中でひっそりと暮らすかれらは,輝きを競ったりはしませんーキンモグラは盲目なんです.

Iridescent colour production in hairs of blind golden moles (Chrysochloridae)

こちらは紹介記事.
World's only iridescent mammal is a shiny accident

キンモグラはサハラ以南のアフリカに20種ほどが生息する地中性の哺乳類のグループ.かつてはモグラ,ハリネズミ,トガリネズミなどと同じ食虫目に分類されていましたが,分子系統学的手法による再分類の結果,現在ではテンレック・ポタモガーレと共にアフリカトガリネズミ目(テンレック目)におかれています.

ARKive photo - Juliana's golden-mole in habitat


※動画の後半までキンモグラは出てきません.

キンモグラの毛が紫や緑の輝きをもっていることは以前から知られていました.4種のキンモグラ(Amblysomus hottentotus, A. septentrionals, Chrysochloris asiatica, Eremitalpa granti)の上毛(オーバーコート)と下毛(アンダーコート)の構造を電子顕微鏡で観察したところ,上毛は断面が○ではなくきしめん状につぶれていて反射面が大きくなっていること,キューティクルが小さくて開かずに非常になめらかに重なり合っていること(シャンプーのCMでいうと上毛が使用後,下毛が使用前のような感じ),さらにキューティクルのひとつひとつが6-19層の明るい色と暗い色の層からなっていることがわかりました.最後の層構造は甲虫の上翅にもみられるもので,直接的にはこれが特殊な反射を生み出しているものの,層の間の反射率の違いが小さいため,先の2つも構造色の輝きを生み出すのに重要な要因であると著者らは述べています.

それにしても,なぜキンモグラは構造色を手に入れたのでしょうか.
構造色でもそうでなくても,あざやかな色彩は性淘汰形質とされるのが普通ですが,盲目のキンモグラには明らかにこれはあてはまりません.
いちばんありそうな仮説として,著者らは地中生活への適応の副産物ではないかと推測しています.
砂や泥の中の移動は毛の表面を著しく摩耗させるので,耐久性を上げるための層構造が生まれ,それがたまたま構造色にちょうどいい数と厚さだった.毛の表面が平らでなめらかなのも,接触する砂や泥をできるだけ乱さない適応,という具合です.
これが本当なら,他の地中性の動物にも性淘汰によらない構造色があってもよさそうです.
シーボルトミミズなんかそうかも?あと,いわゆる潜り系スキンク(トカゲ)もつやつやしたのが多いですね.

にしても,輝きを与えられたのに永遠にそれを目にすることはないなんて,おとぎ話の悲劇のヒロインのようですね.

Snyder et al. (in press) Iridescent colour production in hairs of blind golden moles (Chrysochloridae). Biology Letters. doi:10.1098

暴力の連鎖 in ガラパゴス

12 28, 2011 | Articles

0 Comments
観光業者と地元住民の軋轢は修復不可能な域にまで達し,ダーウィンが愛した進化の実験場を危機に陥れているー

ーみたいな話ではなく,今回の主役はカツオドリ.

Nazca Boobies (Sula granti) Nesting
ナスカカツオドリ.Photo by Bill Bumgarner on Flickr

CHUMSのキャラクターとしてもおなじみの,ペリカン目カツオドリ科に属する大型の海鳥で,10種程度が知られています.
ユニークな顔つき,いじらしい求愛ダンス,寿命が長く一夫一婦制(ただし一定の割合で「離婚」もある:人間もそうですが)など,親しみのわく特徴をそなえる彼ら.しかしガラパゴス諸島に生息する3種のカツオドリのひとつ,ナスカカツオドリSula grantiには知られざるダークサイドがあります.

それはきょうだい殺しとヒナの虐待.

ナスカカツオドリはふつう一度に2つの卵を産みますが,育てるヒナは一羽だけ.
2番目は最初の卵が孵らなかった時のスペアに過ぎず,2羽とも孵った場合は先に孵ったヒナが弟妹を殺してしまうのです.

また,虐待は,その年の繁殖を見送ってコロニー内でヒマしている成鳥が行う奇妙な悪癖で,親鳥が留守の隙によその巣を訪れ,ヒナにかみつくわ交尾を迫るわといったもの(こちらは殺すまではいかない).これもきわめて高頻度で行われていて,この虐待を受けずにおとなになるヒナはいないといいます.

ちなみに近縁のアオアシカツオドリSula nebouxiiにはどちらの行動もほとんど見られません.

Blue Footed Booby Courtship Dance
アオアシカツオドリ.Photo by Scott Ableman on Flickr

となると想像はつきますが,やはりきょうだい殺しとよその子虐待には関連がありました.
2008年に発表された研究で,弟妹を殺さなかった(一緒に仲良く育ったのではなく,もう1つの卵が孵らなかった)ヒナよりも殺したヒナの方が,体内のアンドロゲン濃度が高く,成鳥になったあともよそのヒナに対して攻撃的ということがわかっています.
つまり競争相手を消し,親鳥が捕ってくるエサを独占するという適応的な攻撃性が,副産物として成長後のよそのヒナへの攻撃をうむ,という説明が成り立つわけです.

ヒナをいじめる様子の写真はこちら Boobie Album: Images of Bullying Birds (LiveScience)

しかし弟妹を殺さなかったヒナが虐待をしないわけではないので,この悪癖には他の原因もあるはず.
そこで注目されたのが,「虐待の連鎖」でした.

ヒトにおいては,子どもの頃の被虐待・被ネグレクト経験は成長後の犯罪のリスクになる(念のためいうと,もちろん大多数は犯罪に手を染めない)ことが知られています(例えばWidom & Maxfield, 2001 ただし直接自分の子どもへの虐待・ネグレクトへという話はすぐには見つかりませんでした).
鳥では,それも親以外の個体からの虐待ではどうなのか?

24羽の野生のナスカカツオドリを対象に,ヒナのときに受けた虐待の頻度と成鳥になってからよそのヒナを虐待した頻度の関連をみると,やはりそこには正の相関があり,しかもその結びつきは前述のきょうだい殺しと虐待の関係よりもはるかに強いものでした.

すべてのヒナがなんらかの虐待を受けているから,(まだわからない生理的メカニズムによって)きょうだい殺しをしたしてないに関わらず成鳥になると自分も虐待者になるのであって,そこにはなんのためという適応的説明はいらないのかも,と著者らは言います.また,ナスカカツオドリがアオアシカツオドリのヒナをいじめることもあり,その場合暴力の連鎖が別種にまで波及するのかどうかも興味深いテーマ,とも.

実はこの研究,夏のアメリカの学会でポスター発表されていたのですが,ずっと人だかりでちゃんと説明を聞けなくて残念でした.どうやら野外実験もやってるらしいのですが... 今後も注目しておきたい研究です.

参考文献
Müller et al. (2008). Perinatal androgens and adult behavior vary with nestling social system in siblicidal boobies. PLoS ONE 3:e2460.
Müller et al. (2011). Maltreated nestlings exhibit correlated maltreatment as adults: evidence of a "cycle of violence" in Nazca Boobies (Sula granti). The Auk 128: 615-619.
Widom & Maxfield. (2001). An Update on the “Cycle of Violence”. Research in Brief, Washington, D.C.: U.S. Department of Justice, National Institute of Justice. NCJ 184894.

ミユビシギに恋する81秒

12 17, 2011 | Videos

0 Comments
たった81秒にSanderling = ミユビシギのキュートさが凝縮されたセンスあふれる高画質動画.
けんけんするところなんかヤバイです.
「ミユビシギは世界一おもしろかわいいシギチ!」という作者のコメントにもうなづけます.

ベトナムで新種発見!イタチアナグマってどんな動物?

12 14, 2011 | Articles

0 Comments
新種の生物は毎年何百,何千種と発見されていますが,哺乳類では種数の多い齧歯目やコウモリ以外ではそうそうありません.
食肉目では去年マダガスカルの湿地でDurrel's Vontsira (Salanoia durrelli)が新たに記載されていますが,その前はといえば25年前にまで遡ることになります.
参考:新種の肉食哺乳類:24年ぶり - ナショナルジオグラフィック

そんな中,ベトナム北部のクックフォーン国立公園で食肉目イタチ科の新種の動物が発見されました!
Bizarre new mammal discovered in Vietnam - Mongabay.com
学名は発見場所にちなんでMelogale cucphuongensis.面構えはこんな感じ.トガリネズミっぽく見えますがイタチの仲間です.
mel.jpg
Nadler et al. 2011より(Photo by Elke Schwiertz)

この動物が初めて見つかったのは2005年.ワナにかかってけがをした個体が国立公園内の保護施設で飼われていたのですが,事故で死んでしまい,もったいないことにその死体は保存されずに捨てられてしまいました.しかしその翌年,同じ国立公園内で状態のいい死体が見つかり,これを前年の個体の写真と照合して同種と確認したうえ,タイプ標本として近縁種と比較し,晴れて今年新種として記載されました.何を食べるのか,どのくらいの行動圏を持つのか,子どもは何匹産むのか,この公園以外に生息地があるのかなどの生態の詳しいところは全くわかっていません.

Melogale属は和名ではイタチアナグマ(ちなみに英語ではFerret-badger)と呼ばれ,これまで東〜東南アジアに次の4種が知られています.どれも体重3kg以下の小型の動物で,生態は断片的にしかわかっていませんが,夜行性で森林に棲み昆虫や果実などを食べているようです.

Melogale moschata (シナイタチアナグマ:分布図の青)
Melogale personata (ビルマイタチアナグマ:分布図の赤)
Melogare orientalis (ジャワイタチアナグマ:分布図の緑)
Melogale everetti (ボルネオイタチアナグマ:分布図のオレンジ)

分布図の斜線の部分にはシナイタチアナグマとビルマイタチアナグマの両方が生息しています.
クックフォーン国立公園もこの中なので,少なくともここでは近縁の3種が共存していることになります.
Melogale_range.png
Wikipedia - Ferret-badger

こちらは台湾で撮影されたシナイタチアナグマの動画.


イタチアナグマの仲間はどれも外見はそっくりで,分布が重なるシナ〜とビルマ〜は歯を見ないと正確には区別できないとされています.
これらと比べると,今回見つかったベトナムイタチアナグマ(仮)は,顔の柄が地味(白い部分が小さい)なのと,鼻先が細長いのが特徴的.細長い鼻先は頭骨の比較でもはっきりわかると記載論文に書かれていました.
ファラヌクオーストンシベットのように,こういう細長い顔つきは昆虫・無脊椎動物食に多い印象がありますが,さてこいつはどうなんでしょう.
ミトコンドリア遺伝子の比較も行われていて,シナ〜とビルマ〜が分かれるより前に種分化したことが示唆されたそうです.
phy.png
Nadler et al. 2011より.数字は分岐年代の推定値(単位100万年)

ところでキツネザルがサル,オオカミウオが魚というルールに従うとイタチアナグマはアナグマであるはずですが,実はイタチアナグマは系統的にはアナグマ(Meles meles:上から3つめ)とはかなり遠いんですね.

ちなみに,今回の発見があったクックフォーン国立公園,じつは数年前に行ったことあります.
アクセスのいい国立公園で,ハノイの旧市街の旅行代理店でツアーがたくさん出ています.
日帰りや一泊では動物に会うのは難しいですが,霊長類保護センターがあり(最初のベトナムイタチアナグマ(仮)が保護されたのもここ),ドゥクモンキーなどベトナム固有のかなり希少な種も見ることができます.
最近カメの保護施設もできたらしいです.あーまた行きたいなーベトナム.

参考文献
Nadler et al. 2011. A new species of ferret-badger, Genus Melogale, from Vietnam. Der Zoologische Garten 80: 271-286.

Next Page »